【2025年】ドローン業界の現状や将来性、ビジネスモデルについて

ドローンといえば、今では単なる娯楽の範囲を大きく越えて、映画の撮影や物流・配達、危険な場所の点検、または安全管理や警備など、非常に幅広く活用されています。ドローンの活用範囲は、今後もますます広がっていくことが予想されています。
「ドローンが好きなので、ドローンを使ったビジネスに興味がある!」「儲かるのであれば、新しくドローンを始めたい!」などなど、ドローンとビジネスを取り巻く環境の変化とともに、多くの人の興味を集めています。
ここでは、そんなドローンを用いたビジネスモデルについて、現在の市場規模や将来性、すなわち今後の可能性について詳しくみていきたいと思います。どのような事業が特に拡大していくのか、または実際にドローンビジネスを始めるに当たって押さえておくべきポイントはどこかなど、まだドローンを始めていない人でも分かるよう具体的かつ徹底的に解説していきます!
ドローンの現在の日本の市場規模について
2024年度の日本国内のドローン市場規模は4,371億円で、前年度から13.4%増と大幅に伸びています。この市場規模は今後も拡大する見込みで、2025年度には4,987億円に成長すると試算されています。また、2028年度には9,054億円に達すると予測されており、2024年度~2030年度の年間平均成長率に換算すると、年15.2%の増加率となっています。
ドローンといえばいわゆるエンドユーザーが画像や動画の撮影用に使うというイメージが多く持たれがちですが、市場規模の割合でみると農業や点検、または土木・建築、防犯、物流などの「サービス市場」が最も大きく、2024年度では全体の53%ほどを占めています。
次に大きな市場が「機体市場」であり、農薬散布や点検、運搬、測量などの用途向けに製造された機体の売買金額は、2023年度で国内のドローン市場の27%ほどを占めています。上述したエンドユーザー向けの機体もこちらに含まれます。

なお、さまざまな市場・分野の中でも特に目覚ましい発展を遂げているのが物流分野であり、2020年度以降、2022年度に有人地帯での目視外飛行(いわゆる「レベル4」)を実現するための新しい取り組みなどが多く行われました。たとえば、携帯電話のネットワークを活用した長距離フライトによる輸送や、オンラインの服薬指導と併せた処方薬の輸送などが挙げられます。
こうしたデータからも分かるように、ドローンは単なるエンドユーザー向けの商品ではなく、社会インフラとしての役割をも大きく果たすようになってきています。それゆえ、市場は今後もさまざまな分野で拡大し続け、ビジネスチャンスが大きくなっていくと考えられています!
参照:
『ドローンビジネス調査報告書2025』3月28日発売 | インプレス総合研究所
ドローンの現在の海外の市場規模について
日本国内で広がりをみせるドローン市場ですが、海外ではさらに大きな規模で市場が広がっています。世界全体のドローン市場は、2024年には367億ドル(1ドル=150円換算で約5兆5,050億円)に到達しました。今後も成長が続くと見込まれており、2029年には2.5倍の931億ドル(約13兆9,650億円)になると予想されています。
世界でドローンが活用される分野は日本国内での活用範囲よりも広く、交通・気象監視や消防・捜索・救助活動、さらには法執行や軍事活動に至るまで、社会のあらゆる分野に広がっているといっても過言ではありません。

近年では特に軍事や防衛・安全保障に関する分野で状況認識能力の補完・向上に大きく寄与しています。これらの分野は社会や国の安全保障に直結する領域であるため、それぞれの国が総力を挙げて開発・支援を行っています。こうした理由から、今後も市場が発展・拡大していくことは間違いないといえるでしょう。
また、ここ数年で社会の在り方を大きく変えたCOVID-19(コロナウイルス)の状況下では、ドローンが様々なサービスを提供・実現するための理想的な解決策であることが多くの領域で証明されつつあります。たとえば感染を回避しながらの迅速な配達や物資の授受、さらには状況の確認など、多くの場面でドローンは高い作業効率と生産性を実現しています。こうした社会情勢もまた、今後の市場の拡大を裏付ける大きなポイントとなっています。
参照:
Drones Market Report 2025, Industry Outlook & Size Forecast
ドローンの将来性について
世界中で加熱するドローン市場。その活気あふれる市場で、これからビジネスを始めたいという人も多くいます。なお、魅力あるドローン市場と一口にいっても分野によって将来性や伸び幅は異なります。市場全体が拡大の一途を辿っているとはいえ、事業領域によってその成長の度合いは多種多様です。ビジネスチャンスを見つけるのであれば、各分野の将来性などを知っておくことが不可欠といえるでしょう!

ドローンの市場は、大きくいくつかに分類することができます。大枠で分類すると、「機体市場」「サービス市場」「周辺サービス市場」の3つに分類が可能です。
「機体市場」は文字通り、ドローンの機体に関する市場です。エンドユーザー向けや事業者・企業向けの機体の売買市場のイメージ通りです。具体的には、上述したように運搬や点検・測量、または農薬の散布用の機体などいわゆるBtoBのものが市場の5割弱を占めており、個人がネットショップなどで購入するような個人向けの市場は3割程度となっています。
なお、上述したように日本国内のドローン市場規模は2024年時点で4,371億円に達し、前年から堅調な拡大を続けています。さらに2025年には4,987億円規模に成長すると見込まれており、年平均15%前後の成長率を維持すると考えられています。また、海外の市場規模は2024年に5兆5,050億円に達し、今後も成長が続くことが期待されています。
世界と比較してやや出遅れた感の否めない日本国内のドローン事情ですが、今では多くの国内企業がBtoB、BtoCの分野でドローン事業に注力しています。そのため、今後は国産機体の開発もますます進んでいくことが予想されます。
加えて、アメリカをはじめとする主要国で中国製ドローン排除の動きが活発になっていることも、日本の国産機体の製造を加速させる大きな要因となります。2020年には、日本政府がセキュリティの担保されたドローンの調達を行うよう、方針を公表しています。日本国内ではドローンが国防や安全保障と直結している海外ほどにはドローンのセキュリティに対する意識がやや希薄かもしれませんが、こうした背景から今後は国産の機体の開発・製造に拍車がかかることは間違いないといえるでしょう。
「サービス市場」はドローンを用いたサービスを提供する市場であり、建築・土木・農業・または各種の点検・安全管理などに関する分野でのビジネスモデルが該当します。
特に2022年12月の「レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)」の解禁は、サービス市場の可能性を飛躍的に高めました。2025年現在、このレベル4飛行を活用した実証実験や社会実装が全国で本格化しており、都市部での医薬品配送や過疎地への物流網構築、災害発生時の迅速な情報収集など、これまで実現が難しかった領域でのサービスが現実のものとなりつつあります。
「周辺サービス市場」は、ドローンの活用に不可欠となるバッテリーやプロペラといった消耗品や定期的なメンテナンス、または各種の保険などが該当します。しかし近年、この市場は単なる消耗品販売に留まらないようになっています。たとえば、ドローンの自律運用を可能にする「自動離着陸ポート(ドローンポート)」や、撮影した映像からAIが自動でひび割れや錆(さび)を検知する「AIデータ解析プラットフォーム」といった、より高度で付加価値の高いサービスが急速に成長しています。こちらの市場は他の2つよりも規模は小さいものの、今後も他の市場が大きくなるにつれて、同様に大きくなっていくことが予想されています。

いずれの市場にも共通しているのが、市場の発展が社会構造の変化に大きな影響を受けるという点です。たとえば、日本では少子高齢化が顕著であり、人口減少に歯止めがかからない状態となっています。それゆえ社会全体で労働人口が減少しており、人手不足が慢性化している企業も多くあります。さらに、高度経済成長期やバブル直後につくられた社会インフラの多くが老朽化しており、その改修・保全も急務となっています。こうした社会背景から、さまざまな課題を解決するドローンの必要性が非常に大きくなっています。
こうした社会課題に対し、ドローンは単なる代替労働力ではなく、AIや自動化技術と連携することで「より安全」で「より高効率」な解決策を提供することが可能です。規制緩和、技術革新、そして差し迫った社会ニーズという3つの要素が噛み合った今、ドローンの必要性はますます高まっています。
現在ドローンが活躍している業種・業界・分野について
今や多くの領域で不可欠な存在となったドローン。ここでは、そんなドローンが活躍している業界や分野について詳しくみていきます。
農林水産業界

農林水産業界は、日本のドローン市場において最も早くから活用が進み、大きな市場を形成してきた分野です。その背景には、他の産業に先駆けて深刻化した高齢化による労働力不足という切実な課題がありました。ドローンは、この課題に対する直接的かつ効果的な解決策として導入され、今や「スマート農業」に不可欠な基幹技術となっています。
たとえば農薬・肥料散布、播種の分野はドローン活用の原点であり、現在も中核をなす用途のひとつです。従来は重いタンクを背負って行っていた散布作業や高価な産業用無人ヘリコプターに頼っていた作業を、より安価で手軽なドローンが代替しています。その効果は劇的で、たとえば傾斜地のみかん畑においては、手作業で2時間を要していた農薬散布がドローンを活用することでわずか8分で完了し、作業時間を93%も削減した事例も報告されています。
参照:
ドローンを活用した「スマート農業」の導入に向けた実証実験を開始 生産者高齢化が進む沼津のみかん畑で農薬散布の作業時間を93%削減
建築・土木業界
建築・土木業界は、ドローン活用によるデジタルトランスフォーメーション(DX)が最も劇的に進展している分野のひとつです。特に、プロジェクトの起点となる測量業務においてドローンはその威力を最大限に発揮しています。従来、広大な建設予定地の測量は複数の作業員が数日から数週間をかけて行うのが一般的でしたが、ドローンを用いることで作業時間を10分の1に短縮することも可能になっています。

また、ドローンの役割は初期測量に留まりません。工事期間中、定期的に現場上空を自動航行させることで工事の進捗状況を定点観測し、3次元データとして記録することも可能です。これにより、掘削や盛土の土量を正確に計算したり、設計図と現場の差異を比較検証したりすることが容易となっています。また、現場全体を俯瞰した映像は作業員の安全管理や発注者への進捗報告においても非常に効果的であり、プロジェクト全体の透明性と意思決定の迅速化に貢献しています。
物流業界
日本の物流業界は、2024年4月から施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制、通称「物流の2024年問題」により、深刻な輸送能力の低下とコスト上昇という危機に直面しています。ドライバー不足と高齢化が進行する中で、この規制は業界全体の持続可能性を揺るがす大きな課題となっています。
この国家的危機ともいえる状況において、ドローン物流は、その解決策のひとつとして大きな期待が寄せられています。特に、配送効率が低くドライバーの負担が大きい山間部や過疎地、離島といった地域への「ラストワンマイル配送」をドローンが担うことで、人間のドライバーをより幹線輸送や都市部の高密度な配送といった、付加価値の高い業務に集中させることが可能となります。これは、単なる技術的な興味からではなく、社会インフラを維持するという喫緊の必要性からイノベーションが加速される「危機主導型イノベーション」の典型例といえます。レベル4飛行の解禁という技術的な土台と、2024年問題という社会的な要請が合致したことで、日本のドローン物流は実用化に向けて大きく舵を切ることになりました。
警備・防犯業界
警備業界においても、人手不足と人件費の高騰は深刻な課題であり、その解決策としてドローンの活用が進んでいます。特に、広大な敷地を持つ工場や倉庫、建設現場、メガソーラー施設などでは、人間が徒歩や車両で巡回するよりもドローンを用いる方がはるかに効率的かつ網羅的な監視が可能となっています。
現代のドローン警備システムの中核をなすのが、「ドローンポート」と呼ばれる自動離着陸・充電基地です。ドローンはプログラムされたスケジュールに従ってドローンポートから自動で離陸し、設定されたルートを巡回飛行します。任務完了後、もしくはバッテリー残量が少なくなると自らポートに帰還し、自動で充電を開始します。これにより、人間の介在を最小限に抑えた24時間365日の持続的な自律監視が実現することになります。
エンターテイメント業界
エンターテイメント分野において、ドローンは全く新しい表現手法を生み出しています。数百機、ときには数千機ものLEDライトを搭載したドローンを精密にプログラミング制御することで夜空に巨大な3Dアニメーションやメッセージを描き出す「ドローンショー」は、その圧倒的な視覚的インパクトで急速に市場を拡大しています。その市場規模は前年比で約2倍という驚異的なペースで成長しており、新たなエンターテイメントの形態として確固たる地位を築きつつあります。

空撮分野
ドローンビジネスの原点ともいえる空撮分野は、現在も安定した市場を形成し、特に不動産と観光プロモーションの領域でその価値を進化させています。
たとえば不動産業界では、ドローン空撮は物件の魅力を伝える手法を根本から変えています。地上からの写真では伝えきれない物件の全体像や周辺環境との位置関係、または日当たりや眺望といった情報をダイナミックな映像で訴求できる点が強みです。特に、密集した住宅街にある物件や広大な敷地を持つ物件の紹介においては、その効果は絶大です。魅力的な空撮映像は、顧客の関心を強く引きつけ、内見への動機付けとなり、ある事例では物件の販売率が2倍に向上したとも報告されています。
点検分野
点検分野は、日本のドローンサービス市場において最大かつ最も急成長しているセグメントです。市場規模は2024年度に1,053億円に達し、4年後の2028年度には2,088億円へと倍増すると予測されています。
現在、高度経済成長期に集中的に建設された橋梁、トンネル、ダムといった社会インフラが一斉に高齢化・老朽化していることで、その維持管理が国家的な課題となっています。従来の人手による点検は、多大なコストや時間、そして高所作業などに伴う労働災害のリスクを有しています。この点、ドローンは、これらの課題に対する効果的な解決策となっています。また、点検分野の市場は他の分野に比べて景気変動の影響を受けにくいことから、持続的かつ安定した成長が見込まれています。インフラの維持管理は経済状況にかかわらず必須の社会的な責務であることから、その効率化と安全性向上に貢献するドローンの需要は今後も続くと考えられています。
参照:
ドローンビジネス調査報告書2025【インフラ・設備点検編】

計測分野
ドローンによる計測が建設・土木分野で信頼される技術として定着した背景には、測位精度の飛躍的な向上があります。高精度測位技術の登場により、ドローンは誤差数センチメートルというレベルで位置情報を取得できるようになりました。
この高い精度は詳細な地形図の作成、構造物の精密な配置計画、インフラの変位計測など、公共測量や設計・施工管理で求められる厳しい基準をクリアするものとなっています。また、研究機関ではドローンの飛行速度の変化や搭載センサー間のわずかな時刻ズレなどが精度に与える影響を解析し、それらを補正することでより信頼性の高いデータを生成する手法の開発が続けられており、国土交通省の定める要領にも準拠する評価を得ています。これらの技術的進歩が、ドローン測量の信頼性を担保しその社会実装を支えています。
ドローンのビジネスに直結する「飛行レベル」について
ドローンビジネスに参入を考えている場合、必ず押さえておくべきポイントがあります。それは、ドローンの「飛行レベル」です。ドローンに関しては政府が発表している「空の産業革命に向けたロードマップ」があり、その中で定められたルールに則って研究・開発・製造・操縦することが求められています。

飛行レベルは、以下のようにレベル1~4に分類されています。
- レベル1:目視内での操縦飛行
- レベル2:目視内での自動および自律飛行
- レベル3:無人地帯での目視外飛行
- レベル4:有人地帯での目視外飛行
レベル1が機体の技術としては最も容易で、レベル4の条件を満たす機体の開発・製造が最も難しくなっています。レベル1の「目視内での操縦飛行」とは、身近なものでいえば空撮がそれに当たります。また、他の業界よりも早い段階でドローンを導入した農業分野での農薬散布なども該当します。
レベル2の「目視内での自動および自律飛行」は、空撮による測量や設備点検などが該当します。
レベル3の「無人地帯での目視外飛行」は山間部や離島での調査やデータ観測、または配送などが当てはまります。
レベル4の「有人地帯での目視外飛行」が技術的には最も高度で、都市部での配送や警備・救助・インフラ点検・災害救助などが当てはまります。

2022年12月5日に施行された改正航空法により、これまで認められていなかったレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)が解禁されました。
このレベル4飛行の実現のため、新たに「機体認証制度」と「操縦者技能証明制度」が創設されました。これにより、国の認証を受けた機体(第一種機体認証)を、国家資格を持つ操縦者(一等無人航空機操縦士)が飛行させることで、都市部など人がいる地域の上空でも目視外飛行が可能になりました。
レベル4飛行はすでに実用化フェーズに入っており、日本郵便による東京都奥多摩町での医薬品配送を皮切りに、物流やインフラ点検などの分野で実証実験や社会実装が進んでいます。
参照:
機体認証|無人航空機レベル4飛行ポータルサイト – 国土交通省
無人航空機操縦者技能証明|無人航空機レベル4飛行ポータルサイト – 国土交通省
ビジネスチャンスと今後の展望
現在の日本国内では、レベル1~3が広く実用化されており、レベル4についても社会実装に向けた動きが活発になっています。ドローンを活用したビジネスチャンスは、このレベル4の解禁によって大きく拡大していくことが期待されています。
今すぐにドローンビジネスを開始したい場合は、実績の多いレベル1~3に関連する事業を選ぶのが実用的といえます。一方、より戦略的に事業を行いたい場合には、レベル4の本格的な普及を見据え、関連する制度や技術開発の動向を注視しながら、将来のビジネスプランを考えるとよいでしょう。
レベル1~2に関するビジネスは参入しやすい反面、競合も多くなります。それに対してレベル3~4のビジネスは高度な技術や専門知識が必要なため参入障壁は高いですが、競合が少なく大きな先行者利益を得られる可能性があります。
自身のビジネスプランと照らし合わせながら、どのレベルで事業を展開するかを選択することが重要です。また、初めはレベル1から参入し、ノウハウや信頼を蓄積しながら段階的にレベルの高い事業へシフトしていくという戦略も計画的といえます。
今後、ドローンが活用される領域はますます広がっていきます。早期に参入することで、関係者との繋がりを深め、市場で優位性を築くことが期待できます。
今後ドローンが活躍する見込みのある業種・業界・分野について
現在でも幅広い業界・分野で活用されているドローンですが、活躍する領域は今後も広がりをみせることが間違いないといわれています。今後の発展の見込みがある業界・分野は、これからドローンビジネスへの参入を考えている人がぜひともチェックしておくべきポイントです!

既存の業界・分野での発展であれば、たとえば農林水産業では農薬や肥料の散布に留まらず、ドローンを活用しての日照時間や育成状況などのデータ収集・数値化、または害獣対策なども実用化が期待されています。また、物流業界ではコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店がドローンを用いた配送などを手がけるようになる可能性があります。点検分野では、現在では難しいとされる水中ドローンによる水中構造物の点検・データ収集なども期待されています。
こうした既存の業界・分野での発展以外にも、これまでになかった以下のような新たな領域での活用も実用化しつつあります。
広告業界
ドローンを活用した広告手法は、日本よりも海外が活発であり、大きな注目を集めています。たとえば、飲料メーカーのコカ・コーラとペプシは、ブランド広告の一環としてドローンを活用したプロモーション動画を作成しています。また、ロシアではドローンに飲食店のポスターやリーフレットを取り付けて高層ビルの周辺を飛行させることで、ビルで勤務する人たちにランチのデリバリーの宣伝を実施した事例もあります。他にも、フランスではドローンにブランド服を着せて飛行させることでブランド認知を高める取り組みを行っています。
医療分野
現在、日本では医療分野でのドローンの活用はまだまだ実用化レベルには到達していませんが、海外の事例を挙げるとアメリカでは医薬品などの輸送手段としてドローンが用いられています。交通渋滞の多い都市部だけでなく、交通網・物流網が発達していない過疎地域での代替手段としても期待されています。現在でも既に、カリフォルニアに本社を置くドローン企業が1日に最大で600件もの配送を可能としています。
アプリ・ソフトウェア開発分野
ドローンが登場した当初は、専用の端末やスマートフォンなどを用いて操作するのが一般的でしたが、ドローンの活用の幅が広がるにつれて、より複雑なプログラムやソフトが必要になっています。そうした中、それぞれの分野・領域で求められる仕様に合わせたアプリの開発が求められるようになっています。それらを担うのがアプリ・ソフトウェア開発業界であり、今後も複雑化するドローンを支える重要な分野です。これからはこうしたプログラミングやソフトウェア設計ができる人材がいっそう必要とされるようになると考えられています。
人材育成・人材派遣分野
上述のアプリ・ソフトウェア開発分野と同様に、年々ニーズが大きくなるのがドローンの操縦に関する人材育成・人材派遣分野です。特定の分野に特化したドローンの操縦には高い操作技術が必要ですが、そうした専門能力は一朝一夕で身に付くものではありません。そこで求められるのが、ドローンの操縦に関する高度な専門能力を持った人材です。現在でも操縦技術を学ぶためのドローンスクールがありますが、今後もその数はますます増えていくことが予想されます。同様に、人材紹介サービスも増えていくといわれています。人材紹介サービスは事業としての参入障壁が低いこともあり、それだけ多くの企業が参入することが予想されます。

今後、より活躍が期待されるドローンの種類
ドローン技術は、画一的な飛行用途に留まらず、FPVドローンをはじめ、水中や農業、防衛・セキュリティ向けなど、用途・環境に応じた多様な形態が進化しつつあります。それぞれ独自の市場成長や技術革新のトレンドがあり、今後のビジネスや社会課題の解決において重要な役割を果たすことが期待されています。
以下では、特に注目すべき4タイプのドローンの特徴と市場の展望についてみていきます。
FPVドローン
FPVドローンは、操縦者がゴーグル越しにリアルタイム映像を見ながら操作するドローンで、レースや映像撮影などエンタメ用途に特化しています。高い操作性とスピード感が特徴で、ドローン競技や趣味市場で人気です。
FPVドローンの世界市場は2024年時点で約2.8億~3.0億ドルといわれており、2025~2032年にかけては年平均成長率が約31%で急成長する見込みです。レクリエーションスポーツとしてのドローンレースの人気の高まりをはじめ、カメラの安定化や伝送システム、飛行制御ソフトウェアなどのドローン技術の継続的な進歩、さらにはコミュニティやDIY文化の発展などが大きな要因と考えられています。技術面では、DJI O4などのデジタルFPVシステムやAIアシスト飛行、長時間バッテリーなどが革新的な進展を遂げており、より安全で高度な操縦体験が可能となっています。
なお、FPVゴーグルを使った空撮や点検は、今後さらに需要が高まることが期待されています。FPVゴーグルを装着することで送信機のモニターよりもはるかに多くの視覚情報が得られるため、特に点検作業においては、より細部までしっかりと確認できるという点が大きなメリットです。また、空撮でも被写体に接近した臨場感あふれる迫力のある映像が撮れるという点で、その可能性や魅力はますます大きなものとなっています。
参照:
FPV Drone Market- Global Industry Analysis and Forecast (2025-2032)
水中ドローン
水中ドローンは、水中での撮影や調査を行う無人機で、海洋研究、インフラ点検、救助活動など幅広い分野で活用されます。長時間潜航や自律航行が可能で、遠隔操作で水中環境を安全に観測できます。
水中ドローンの世界市場は2024年に約56億ドルとなり、2025年には約67億ドル、2030年には約150億ドルを超えると予想されています。主な用途としては、海洋研究、環境モニタリング、インフラ点検(石油・ガス、深海採掘)、海洋安全保障などが挙げられ、AIや自律航行技術の進展により遠隔・長時間の潜航が可能になりつつあります。
参照:
https://www.zionmarketresearch.com/report/underwater-drone-market
防衛・セキュリティ用ドローン
防衛・セキュリティ用ドローンは、監視・偵察・物資輸送など軍事・警備用途に用いられるドローンで、高度なカメラやセンサーを搭載しています。災害時の捜索救助や国境警備など、国家安全保障に直結する任務にも対応します。
防衛・セキュリティ分野のドローンの世界市場は、2023年に約213億ドル、2030年には約421億ドルに成長するとみられています。また、軍事監視ドローン市場は2024年に約12億ドル、2034年には約33億ドルにまで成長すると予想されています。さらに、ドローン防衛システムの市場は2024年時点で既に約330億ドルに達し、2032年には約1.6兆ドル規模になると推定されています。成長率が62%を超えるという、非常に大きな成長が見込まれている市場です。
農業用ドローン
農業用ドローンは、農薬散布、作物の生育管理、収穫予測など農業現場での作業効率化を目的に利用されるドローンです。精密農業や自動飛行技術により、労力削減と生産性向上の両立が可能です。
農業ドローンの世界市場も同様に、大きな成長を遂げています。2024年の世界市場は約27.4億ドルで、2030年には約102億ドルに成長するとの予測があります。こうした成長は精密農業による資源最適化と効率向上への期待、そして世界的な労働力不足や環境負荷低減のニーズに起因しています。特にアジア太平洋地域は最も速い成長が見込まれており、農村地域を中心に市場展開が加速することが期待されています。
ドローンの国家資格の種類
2022年12月5日、「無人航空機操縦者技能証明制度」として国家資格化されたドローン操縦資格には、「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があります。この資格によって、より高度な飛行(特に「レベル4飛行:有人地帯での目視外飛行」)などが可能となり、業務用途における信頼性・利便性が大きく向上しました。以下ではそれぞれの資格の特徴、取得方法、適用範囲などについてみていきます。
一等無人航空機操縦士(第一種技能証明)
「一等無人航空機操縦士」は、第三者の上空または有人地域内での目視外飛行(レベル4) を含む、最も高度な操縦権限を持つ国家資格です。夜間飛行や25kg以上の機体の飛行にも対応できるほか、限定解除によって目視外飛行や夜間飛行などが可能となります。
受験には学科試験(70問・75分)、実技試験に加えて、身体検査が必要です。資格取得によって飛行ごとの国交省への許可申請が原則不要になり、業務効率が格段に向上します。対象年齢は16歳以上で、資格の有効期間や更新手続き(登録講習機関での更新講習と身体基準の遵守)も定められています。
二等無人航空機操縦士(第二種技能証明)
「二等無人航空機操縦士」は、立入管理区域内または第三者上空以外の比較的限定された範囲(レベル1〜3)での飛行 に対応する国家資格です。学科試験(50問・30分)、実技試験、身体検査があります。
飛行ごとの申請が不要になる点は一等資格と共通ですが、レベル4飛行や夜間・目視外飛行は原則できません。まずは二等資格を取得し、経験や要件を整えてから一等資格へのステップアップを目指すことが一般的です。
取得方法と試験内容
国家資格の取得方法には、以下の2つがあります。
(1)登録講習機関(国交省認定のドローンスクール)にて学科・実地講習を受講し、修了後に試験(または一部免除)を受ける方法。
(2)指定試験機関にて、学科試験・実地試験・身体検査を一括で受ける(いわゆる「一発試験」)を受ける方法。
なお、登録講習機関を利用すると実地試験が免除されるため、負担軽減によって初心者にも取り組みやすいといったメリットがあります。
民間資格との違い
ドローンには、国家資格だけでなく「JUIDA認定資格」や「DPA認定資格」といった民間資格もあります。これらはビジネス利用時の信頼性といったメリットがありますが、レベル4飛行や夜間飛行を法的に保証するものではありません。この点、国家資格であれば飛行の幅が拡がり、手続きも円滑になるため、業務や高難易度飛行を目指す方には意義のある選択肢となります。
ドローンビジネスを始めるにあたって必要なこと
ドローンビジネスは、「ドローンが好きだ」という気持ちだけで成功できるものではありません。また、ドローンの操縦技術だけでも成功するわけではありません。どのような業界・分野でサービスを提供するにせよ、たとえば空撮であればカメラのアングルや構図に関する深い知識が不可欠であり、点検サービスであれば対象物の深い理解が求められます。他にも、測量を請け負うビジネスであれば撮影画像を解析するためのソフトの活用が必須です。「撮影だけをして終わる」というビジネスモデルでは依頼が集まることはないため、基本的には全てのビジネスでドローンの操縦技術に「プラスα」が求められると考える必要があります。ビジネスを軌道に乗せたいのであれば、どのような領域であっても操縦技術だけでは競合に差をつけることはできないという点を覚えておくことが大切です!

競合他社と差をつけるためには、競合にはない付加価値が必要不可欠です。いわゆる他社との差別化であり、競争に勝つためにはマストといえるでしょう。また、多くの仕事を引き受けるためにはクライアントからの信頼を得ることも重要です。操縦技術の高さを裏付けるような実績の積み重ねや各種の資格・証明書の取得が、依頼者側の評価を高めるための大きな要素となります。資格・証明書に関しては各種の団体や協会によって試験やセミナーが実施されており、近年ではドローンスクールも盛況となっています。これらを活用して、ビジネスを軌道に乗せていくことが効果的な戦略といえるでしょう。
これまでに触れてきたような操縦技術や知識、そして経験や実績以外にも、ドローンを使ったビジネスを行う上で重要なものがあります。それが、ドローン業界を取り巻く情勢の変化のキャッチアップです。ドローン業界のトレンドの変化は非常に激しく、用いられる技術も日進月歩です。法規制も目まぐるしく行われるため、常に業界の動向にアンテナを張っておくことが重要です。新聞やテレビ、情報サイトや各種の団体が発信する情報などから情報を拾うようにしましょう。
ドローンパイロットの現状
市場規模が拡大し続けているドローン業界。そのひとつであるサービス市場の拡大は、すなわちドローンに関する仕事の需要の増加を意味しています。また、2021年に航空法が改正され、2022年からドローンの国家資格のライセンス制度が導入されたことにより、ドローンパイロットの待遇も大きく向上しているというのも近年の特徴のひとつです。
かつては空撮がメインだったドローンに関する仕事も、現在では測量や農薬散布、警備業務に至るまで幅広くなっています。ドローンに関する求人も増加傾向にあり、求人数は2021年から2023年にかけて2倍ほどに増加したとの試算もあります。
ドローンのスキルに対する需要の高まりを受け、ドローンパイロットの所得水準も高くなる傾向にあるようです。かつては副業に留まっていたものが、今では年間で300万円~500万円ほどの収入になることもあり、文字通り「プロ」や「本業」としても成り立つ職業になりつつあります。
こうしたニーズの高まりは様々な分野でみられ、たとえば自治体などでもドローンを活用し、インフラ機能や災害時の情報収集、または救助活動として用いることも増えています。
<関連記事:広がるドローンの活用事例。自治体や海外など様々な事例をご紹介>
ドローンの用途は今後も国内・国外を問わず増加していくことが予想されるため、一定のスキルを持ったドローンパイロットのニーズもまた、それに比例してますます大きなものになっていくといえるでしょう。
まとめ
ドローンビジネスは、ここ数年で大きく変化しています。そして、今後も大きな発展・拡大が予想されています。そのため、日々多くの企業や事業者がドローンを活用したビジネスへの参入の意欲をみせています。規模や分野によっては個人でビジネスとして行うことができるものもあるため、個人にとっても大きなビジネスチャンスとなっています。

「これから新しくドローンビジネスを始めたい!」という人は、まずは操縦技術を伸ばすことから始めましょう。その後、自分がビジネスを展開したい領域の知識を身につけていくことが効率的なステップアップといえるでしょう。
「ドローンを始めるに当たって独学では難しい、とても不安」という方には、ドローンスクールがおすすめです。JUAVACドローンエキスパートアカデミー大阪枚方校では、これからドローンビジネスを考える人がぜひとも押さえておくべきポイントを、分かりやすく学ぶことができます。基本技術コースから検査・測量・空中散布が学べるコースなど、目的別に特化したコースを豊富に設けています。当スクールでドローン技術を学び、ドローンビジネスの第一歩を踏み出してみませんか?
JUAVAC ドローンエキスパートアカデミー大阪枚方校について
JUAVAC ドローンエキスパートアカデミーは、ドローンの操縦技術の習得から、次世代の一歩進んだ資格を取得できる、専門分野に特化した実践的なスクールです。

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